釧路の民宿休坂の想い出

2023-11-11

目覚めると、昨夜の酒が残っている。

ふらふらする頭にゴメの鳴き声と潮の香り。

霧の日には「霧笛」が聴こえた。

この宿では自分で行動していかないといけない…“動き坂”なんて呼ぶ旅人もいます…。

~心の“休み坂”~

建物は年季の入った古い下宿。玄関を開けると浸みついたカレーの匂い。きしきしと軋む階段を上がると左側が客室。廊下奥に“手水タンク”がかけられたトイレ。トイレは“ポットントイレ(簡易水洗)”。トイレの壁には、落書きいっぱい。
宿に風呂は無く、銭湯に通った。

昭和に思いっきり浸れる民宿でした。

釧路を深く知る旅はこの宿から始まりました。

“その土地で生活するように旅をする”と言う事を教えてくれたのはオーナーのMさんでした。

“休坂”発 酔いどれマップ

春の湯、赤横の赤天狗、ジスイズ、たこ焼き一(かんちゃん)、溢蔵ぼんくら(西やん・故人)、泉屋のスパカツ、ザンギの鳥善など…教えてくれました。

多分人生で、初めてひとりで居酒屋に入ったのは、赤横の赤天狗だった。
赤天狗のおやじさん(故人)の“摩周湖の水”を使った「特製カクテル」。底の厚いグラスになみなみ注がれて…飲み口が良いのでお代わりをする…お代わりの合図は、その底の厚いグラスでテーブルに“ドン!” と叩く…テーブルはガムテープで何重にも補強されている…
美味しい焼き鳥と「特製カクテル」でとても良い酔い心地…なのですが、店を出て、幣舞橋あたりで意識が飛んでしまう。
休坂のベッドまで、どうやって辿りついたのか覚えていない。

また、ジスイズのKさん(故人)との出会いはとても貴重でした。
「ジスイズ」で、サックス奏者(ジャズ)でミジンコ研究家の「坂田明」さんのジャズ演奏を、目の前で観れたのはとても感動しました。

目的も無く旅するのではなく、旅から何か学んで欲しいと休坂のオーナーのMさんから言われた。
「こういう民宿に泊まるという事は人生に迷いがあるという事。人生の行く先が定まっていない。」

例えば…石炭列車を撮ってHPを作ってみればとMさんからアドバイスされました。

私は元々撮り鉄では無いので、臨港線の一般的な撮影ポイント、鉄道の撮り方を教えてもらいました。Mさんは読書マニアでもあるので、本から得た色々な分野の知識は豊富です。またMさんの友人に釧路の鉄道愛好団体の方がいらっしゃいます。

つまり私のHPは休坂のオーナーのMさんの提案で始めました。

「旅人が釧路を紹介する」という目的

「旅人」というところがミソです。旅人視点から。

なので、私のサイトはホームページがメインです。

Mさんの提案で、サイトや写真を始めた旅人も多いようです。

私は止めていた写真も、ここで再開しました。(デジタル機が手頃になって来たこともあるし…)
Mさんに出会わなかったら、私のHP(でぇあぶつさんのスナップ貼)は無かったでしょう。
HPを始めに作り、あとからブログを書くようになりました。

素泊まりの宿ですが、美味しいスープカレーの店「黒魔術」を併設されていて、これはなかなか美味しかったです。

極楽スープカレー

デザートもついています。

この宿に何度か泊まられている方は“酔いどれマップ”やオーナーオススメの飲食店、自分で開拓したお店で飲んでから宿に帰って飲み会を待ちます。

宿の飲み会は、オーナーが夜の仕事から帰った深夜(午前0時15分頃)から始まります。

その日の宿泊者によって話の内容は異なりますが、オーナーご夫妻と同泊者たちと、観光ポイントや釧路のグルメ…果ては…人生論や恋愛論、“夜のお店”の歩き方…など、お酒(コーヒー焼酎)を飲みながら様々な語らいが続きます。
例えば居酒屋で世間の人々の色々な姿を見たり体験したり…時には喧嘩する事もあるかもしれない。(本当の人間の姿が見えるという事)
“夜のお店”で女性との会話を練習し楽しむ事も必要だけど、たとえ練習して会話が上手くなったしても、それはお店の中での事であって、一般に通用するかわからない。

まあ、オーナーの話は最後に「…かどうかは分からない」「…どうなるかは分からない」で〆てしまうので(逃げちゃう)ので、いつも「なんだよ~」という事になってしまいますが、最終的には当然自己判断、自己責任という事です。なんでもやってみろという事。だめだったらそれまで。

語らいは午前1時、2時くらいまで続きますので、休坂は“寝具付き居酒屋”なんて言われていました。
それで翌日もまた連泊。

オーナーはもともと薩摩からの旅人でしたが、釧路のとても自由な空気の中で、都会にはないとても自由な宿を経営され、たくさんの旅人や地元釧路の方々との交流場所となったわけです。

浦見の丘

宿は浦見という町の丘の上にあって、夕日がとてもきれいでした。

その後、住吉町のきれいな建物に移転され、2017年に閉館されました。

オーナーのM様、人生の一つの歩み方を教えて頂きましてありがとうございました。また、釧路でのとても楽しいたくさんの思い出ありがとうございました。


釧路の民宿休坂の想い出

Posted by でぇあぶつさん