釧路を想う – ジス・イズ閉店に寄せて –

2022-07-07

釧路の名店 ジャズ&コーヒー「ジス・イズ」が、2012年9月29日をもって閉店しました。

マスターは2012年に緊急入院され、現在はリハビリ中で、いずれは元気に退院できると思われますが、 「店主の病状も考え合わせ、今年をもちまして幕を下ろす決意をいたしました」 と店のブログに夫人であるT氏の言葉が書かれておりました。

…あのジャズが大音響で流れる中、独特の濃いめのブレンドコーヒーを啜る。 マスターが気配りしながら、静かに語りかける。 そしてふと…時を刻み続けた店内を静かに眺める… もうあの雰囲気に浸れないと思うと、残念です。

店が歩んだ長い43年の歴史の中で、私が訪れたのはほんの最近の短い期間だったかもしれませんが、カウンターの椅子に腰かけていると、昔から釧路に住んでいたような、そんな気持ちになるのが不思議でした。 職業体験に来ていた学生達と話をしたり、プロのジャズサックス奏者である坂田明さんをはじめ、著名な方々のコンサートや落語、個展を見る事ができたり、いろいろな想い出があります。人の「思い」とか「息づかい」、「情熱」に出会う事ができた、そんな店でした。

「人を育てる喫茶店」
ジス・イズは釧路の演劇などの発表の場でもあり、釧路の情報、文化の発信の場所としても重要な所であったのかもしれません。

「全てを受け入れる」
内側から鍵の掛けられないお店のカウンターで、入店されるどのような客様にでも寛いで頂けるように笑顔で応対する。
コーヒーは、一杯一杯、心を込めて淹れる。

これが、いつもマスターが心がけていた事でした。

ジャズ&コーヒー「ジス・イズ」

マスターは103歳で亡くなられた舞踏家 大野一雄氏をとても崇拝しておられ、100歳まで店を続けるといつも語っておられたのですが…またいつか、元気になられましたら、是非色々とお話をしたいなぁと思っています。

マスター、43年間、お疲れ様でした。
私が店に入る時、「(釧路に)お帰り」と笑顔で迎えてくれて、店を出る時、いつも指相撲で負けてくれて、最後に元気いっぱいハイタッチしてくれた、マスターの手の感触が忘れられません。

私は単なる旅人ですが、いつも遠く神奈川の地から釧路を想い続けています。

ジス・イズ初訪問 2007, 10, 12 最後の訪問 : 2012, 2, 8  < 2012年 9月29日閉店 >

追記 : マスターの小林東さんは、肺炎のため2017年1月19日に73歳で亡くなりました。ご冥福をお祈り致します。


釧路を想う – ジス・イズ閉店に寄せて –

Posted by でぇあぶつさん